『Jineko.net ジネコ 2014 Autumn vol.23』に掲載されました。
2014.09.08
<Jineko秋号>のP.75『セカンドオピニオン』で、
院長が患者さんの質問にお答えしています。
ひなぽよさん(34歳)からの相談
■誘発方法と採卵について
主人が白血病による骨髄移植の影響で無精子症になり、治療前に保存した凍結精子で顕微授精をし、29歳のときに第一子を授かりました。
2年前から二人目の治療を再開し、セトロタイド法4回、ロング法1回で採卵しましたが、なかなか授かることができません。良好胚を移植しても着床しないだけでなく、卵胞が育たなかったり空胞だったりと胚移植までたどりつけないことも多いです。ホルモン値や卵管造影などひと通りの不妊検査を受けましたが、特に問題なしとのことでした。
特に問題がないにもかかわらず、卵胞が育たなかったり、卵胞に卵子が入っていなかったりするものなのでしょうか。
【インタビュアー】
一人目と同じ治療法なのに、二人目はうまくいかないそうです。どのような理由が考えられますか。
【院長】
治療歴では、4回の採卵数が1〜15個とバラつきがあり、多い時と少ない時の差が極端です。採卵時の条件や方法が一定していたのか不明ですが、もし同じ条件だったとすれば、まだ34歳とお若いですが卵巣機能が低下(卵巣年齢が上昇)してきた可能性も考えられます。卵巣機能が低下してくると、発育卵胞数は周期によって異なります。月経中(Day3頃)に、血中のFSH測定や超音波検査で胞状卵胞数を確認し、卵胞発育数が多い周期を狙って採卵することがポイントです。一方、卵ができにくい周期は、ピルなどを服用して卵巣を休ませます。
また、卵胞がたくさん見えているのに採卵数が少ない場合は、エンプティフォリクル症候群も考えられます。1/500〜1/1000の割合でHCGの注射を打っても効かない方がいます。そのようなことが起きていて、卵胞が多く確認できているのに、採卵数が少ないのかもしれません。この場合、通常5000単位のHCG注射を10000単位に増やしたり、アンタゴニスト法ならHCGをアゴニスト点鼻薬に変えることで、採卵数を上げることが可能です。
【インタビュアー】
胚移植に至らない、または胚移植後に着床しないのはなぜでしょうか。
【院長】
凍結胚盤胞を4回移植しても妊娠に至らないということは、妊娠・出産後の着床環境に変化があり、着床しにくくなっている可能性もあります。一度、着床障害の検査や子宮鏡検査をおすすめします。原因不明不妊の方に着床障害の検査(不育症の方に実施する検査)を実施すると、約60〜70%の確率で異常が見つかります。
【インタビュアー】
子宮環境を調べたり、これまでの方法を変えてみるなど、治療の見直しが必要ですね。
【院長】
子宮環境を調べるという点では、胚移植前の子宮鏡検査もおすすめします。例えば、超音波では見つからない原因不明の着床障害の方を検査すると、20〜30%の確率で子宮内膜ポリープが見つかります。着床障害の検査はもちろん、子宮鏡検査で確認しておくとより安心です。
また、胚盤胞でうまくいかない場合、胚移植の方法を二段階胚移植法に変えることもあります。胚盤胞移植で妊娠しない方の約45%が二段階胚移植で妊娠可能とのデータがあります。二段階胚移植は、1回に複数の卵を戻すため、初めての方には多胎のリスクが予想されますが、この方は胚盤胞をすでに4回試されているので、多胎のリスクはそれほど上昇しないと考えます。
今回の治療では、凍結胚と新鮮胚どちらも試されていますが、凍結胚で妊娠・出産されていることを考えると、二段階胚移植で凍結胚を移植されるのが良いのではと思います。