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顕微授精で妊娠に至らない原因は?

レディースクリニック北浜 院長 奥裕嗣

  • 医学博士
  • 日本産婦人科学会専門医
  • 日本生殖医学会生殖医療専門医
  • 日本生殖医学会生殖医療指導医

愛知医科大学卒業後、同大学産婦人科学教室に入局。その後、アメリカにて体外受精や顕微授精をはじめとする生殖医療技術の研修を受ける。
IVF大阪クリニックおよびIVFなんばクリニックで副院長を歴任した後、レディースクリニック北浜を開院。以来、20年以上にわたり不妊に悩む患者さまの診療に従事している。

教えて!

今まで一度も妊娠検査薬が陽性になったことはありません。
20代で受精も着床もできてません。
考えられる原因・対策、私が妊娠できる可能性はあるのかを教えて頂きたいです。
またどのくらいの時期で転院を考えるべきでしょうか?

お答えします

レディースクリニック北浜 
Dr.奥 裕嗣

1回の胚移植ですので詳細は分かりませんが、偶然胚移植した卵に染色体異常があったという可能性は1つあるかと思います。
あとは子宮の受け入れ側の方に何か着床を阻害するような原因が隠れている可能性はあるかもしれません。
2回胚盤胞や胚移植をしてうまくいかない場合は、そういった検査(TRIO法)着床の窓の検査や乳酸菌の検査(FMMA法)乳酸菌が足りているかとうか、ALICE法という慢性子宮内膜炎、感染がないかなど、あと子宮の中に器質的な疾患、内膜ポリープとか着床を阻害するようなものがないかどうかを子宮鏡の検査で検索するということがどうかなと思います。

質問

不妊治療の先進医療や治療法についてどのような提案をされますか?

回答

読ませていただいた限りは1回の胚移植かと思いますのでもう1つ凍結胚があるということで、こちらSEET法(子宮内膜刺激胚移植法)1回の採卵で1回しかできないものですから、それと同等の効果があるかはわかりませんが、同じような効果を期待して先進医療ということであれば胚移植1つ前の周期にスクラッチ法という子宮の内膜を刺激して次の周期に胚移植するという方法があります。
あと2回目の胚移植でうまく妊娠しない場合はSEET法を1回含んで胚盤胞を2回胚移植してもうまくいかない方はこちらも先進医療になって2回目の治療は自費になりますけど二段階胚移植ということが可能かと思います。
あとさっきお話ししたTRIO法の検査とか子宮内膜の検査で子宮鏡の検査を受けられるのがいいかと思います。
あともう一つですが、こちらを見させていただくと一般体外受精ですね。コンベンショナルの一般体外受精で受精率がかなり低いというのがあるかもしれませんので、次の時は精子の所見にかかわらず、全部顕微授精を進めていくのがいいかと思います。

質問

妊娠を促進するためのサプリメントや生活習慣の改善があれば教えてください。

回答

恐らくですがベースに多嚢胞性卵胞症候群があるかもしれません。
月経周期とかが30日というのは規則的でちょっと診断基準には入ってこないかもしれないですけど、AMHの値とかは高めですのでベースに多嚢胞性卵胞というのが隠れている、それに近いような病態はあるのかもしれません。
もしそういう場合は多嚢胞性卵胞の方、糖尿病の予備軍になってくるようなグループの方がありましてそういう検査、空腹時の血糖値とかインシュリンの抵抗性を診るような検査、インシュリンの値からHOMA-Rというのを計算して、もし異常があるようであればメトホルミン、糖尿病のお薬とか、グリスリンという舞茸のキノコからとったようなサプリが糖質代謝異常を改善して多嚢胞性卵胞の方の胚質向上とかに貢献できる可能性があると言われています。

質問

転院を考えるべき時期や判断基準についてアドバイスをお願いします。

回答

いつ転院するとかそういう決まりは特にないと思いますけど、あとはご本人が納得して治療を受けられるかということが一番大切かと思いますので、主治医の先生とよくご相談して、しっかりお話ししてもらって、それで治療方針が納得できるということであれば転院も必要はないかと思いますので、よく相談して決めて頂くのが良いかと思います。

質問

治療データをみて気になるところがあれば教えて頂きたいです。

回答

治療経過を診させていただいて特に大きな問題はないと思いますが、1つさっきお話しした一般体外受精で受精率が低いというのがあると思いますので、次の機会は全例顕微授精で治療するということで、そこで受精卵の数が増えればまた結果が違ってくる可能性はあるかと思います。

 

●SEET法(子宮内膜刺激胚移植法)
採卵周期に、胚盤胞培養を行った胚と培養液を別々に凍結保存しておき、胚盤胞移植の2-3日前に凍結保存しておいた培養液を融解して子宮内腔に注入する方法

 

●スクラッチ法
胚移植する前の周期に、人工的に子宮内膜を引っ掻き小さな傷をつける方法、局所的な炎症から出るサイトカインが受精卵の着床を助けると言われている。

 

●二段階胚移植
二段階胚移植法は、初期胚で子宮内膜の胚受容能を高め、その後妊娠確率の高い胚盤胞を移植することで、着床率・妊娠率が向上するメリットがあります。